糸の細さと柔らかさへの追及

繭縄が選ぶ糸は、1ミリの極細糸です。市販の縄によく使われる2ミリ糸とは、見ただけでは分からないほどの差に思えるかもしれません。でも、撚り上がった縄の構造と使い心地は、まったく別物になります。

細い糸を束ねると、同じ直径でも内部の隙間が少なく、まるで細かなパズルのように密に組み合わさります。この“隙間の少なさ”が、柔らかさとしなやかさを生み出します。撚りを動かしたときに力が均一に伝わるため、縄がねじれにくく、肌に触れた時の小さな角やザラつきが出にくいのです。緊縛中の動きにも自然に追従し、扱い手にも受け手にも素直な反応を返してくれます。

さらに、細糸で組んだ縄はオイルの保持力が高いという特徴があります。理由は構造そのものです。細い繊維が密に集まることで毛細管のような働きが強まり、表面だけでなく内部まで均一にオイルを抱え込みます。これによりしっとりとした柔らかさが長く続き、使用を重ねても急にガサついたり硬化したりしにくくなります。ここは、太糸では真似しにくい部分です。

もちろん、細い糸は摩耗の影響を受けやすいという弱点があります。一度の擦れが糸の一本一本に与える負荷が相対的に大きいため、耐久性だけを基準にすると太糸に軍配が上がります。しかし、柔らかさ・肌触り・締まりの滑らかさ・扱いやすさといった、緊縛における“質そのもの”を左右する要素では、細糸の方が確実に優位です。

繭縄が1ミリの細糸にこだわるのは、見た目の好みでも、軽い哲学でもありません。糸の細さが構造を変え、その構造がしなやかさとオイル保持を生み、その結果として使い心地が変わる――そこに明確な理由があるからです。

上が繭縄の細い糸。下が一般の太い糸。

左側が一般に使われている縄の糸です。
右側が繭縄に使われている細い糸です。